ここでは研究の背景や、原理など簡単に紹介します。

空気軸受の種類
スクイーズ効果
アクティブスクイーズ軸受の原理と特徴



空気軸受の種類

空気軸受は圧力発生の原理より、静圧空気軸受と動圧空気軸受に大別されます。

静圧空気軸受 (Hydrostatic air bearing)
物体を圧縮空気で保持することで、非接触で高精度な運動を可能にすることから、精密測定器、加工機に広く応用されています。しかし、外部から軸受面に圧縮空気を供給するための圧縮機や配管設備が必要不可欠であり、密閉された容器や、配管スペースが十分とれない機器では使用できません。
動圧空気軸受 (Hydrodynamic air bearing)
@くさび効果 (Wedge effect)
現在最も一般的に利用されているのはくさび効果を用いた動圧空気軸受で、これは、軸と軸受面との相対すべり運動によって軸受すきまに介在する空気膜に圧力を発生させるものであり、軸が回転しなければ負荷容量は発生せず、軸と軸受面との接触は避けられません。

Aスクイーズ効果 (Squeeze effect)
動圧スクイーズ空気軸受は、対向する2面間(軸−軸受面)の相対的な垂直方向の振動により、すきま内の圧力の一周期間の時間平均値が周囲の圧力より高くなる効果(スクイーズ効果)を利用して、回転軸を非接触で支持するものです。外部からの圧縮空気の供給を必要とせず、軸が回転していなくても負荷容量を有するため、上述の欠点を持たない新形式の軸受として、その実用化が期待されています。




スクイーズ効果

スクイーズ効果とは、対向する2面間(軸−軸受面)の相対的な垂直方向の振動により、すきま内の圧力の一周期間の時間平均値が周囲の圧力より高くなる効果です。
左図のように、平行な2枚の円板間のスクイーズ効果を考えます。 下の板を正弦波状に振動させます。そのとき、振動の周波数が高く、円板の面積が大きく、かつ、円板間の隙間が狭ければ、気体の持つ粘性によって、隙間周辺部の気体の出入りが拘束されます。
そのとき、隙間内の空気膜に発生する圧力の時間変動は,ボイルの法則から右図のようになります。正圧の絶対値は、負圧の絶対値より大きくなることがわかります。すなわち、時間平均的には正圧が得られます。したがって、上の板に対して、負荷容量が得られます。



アクティブスクイーズ軸受の原理と特徴

本研究のアクティブスクイーズ空気軸受は、回転している軸を非接触で支持できると同時に、その軸の多自由度位置決めが可能です。ここではその原理と特徴について説明します。

物体の浮上
簡略化したモデルで、アクティブ軸受の作動原理を説明します。物体を挟んで対向する2つの振動パッドは、圧電素子により正弦波状に振動します。その結果、スクイーズ空気膜が発生し物体は浮上します。 片側のみの空気膜では、発生する空気膜の圧力変動により、浮上物体が駆動周波数と同じ振動で微振動することが報告されています。本研究においては、それぞれの圧電素子には同位相の交流電圧が印加され、振動パッドは互いに向き合うように配置されています。これにより空気膜の圧力変動はほぼ同位相となるため、浮上物体の微振動を減らすことができます。

非接触位置決め
圧電素子に印加する直流電圧を一方は増加させ、他方は同じ大きさだけ減少させることで、浮上物体はΔだけ移動し、浮上物体の位置決めが可能となります。従って、この方法を軸受に適用すれば、回転軸を非接触で多自由度に位置決めすることができます。また、回転運動誤差を計測する手法を構築し、検出された運動誤差を動的に補正することで、回転軸の高剛性化・高精度化を実現することができます。

この原理をもちいて、アクティブスクイーズ空気軸受を開発しました。下図がその概念図です。

圧電素子と振動パッドで構成される励振装置が回転軸を取り囲むように配置されています。励振装置を高周波で振動させると、回転軸−振動パッド間に周囲の圧力より高いスクイーズ空気膜が発生し、その結果、外部からの圧縮空気を供給することなしに回転軸を非接触で支持することが可能となります。