ここでは軸受の性能を評価するための実験方法と結果を紹介します。

スクイーズ空気膜の剛性
回転軸の運動誤差
運動誤差補正システム
運動誤差の補正



スクイーズ空気膜の剛性
剛性の測定方法
振動パッドを高周波で振動させ、軸軸受間に スクイーズ空気膜を発生させます。これで軸が非接触支持されます。 この状態で軸にラジアル方向から荷重を負荷します。 負荷荷重にともなう空気膜厚さの減少量冑を静電容量型変位計で測定します。
右の図が実験結果の1例です。 横軸が負荷荷重、縦軸が空気膜厚さの減少量です。 空気膜の減少量の勾配は負荷荷重の増加に伴い緩やかになる 非線バネ特性を示しているのが確認できます。 本研究でいう空気膜の剛性は無負荷時で軸が中立位置に いる状態での剛性をいいます。 図で説明しますと近似曲線の僥=0での 微係数から剛性を算出します。 この実験条件で発生する空気膜の剛性は約0.78N/μmになりました。
スクイーズ空気膜の剛性
では、いろいろ駆動振幅・平均隙間を変えた場合の空気膜の剛性の変化を説明します。 駆動振幅の増大、平均隙間の減少で空気膜の剛性は増加しています。
また本実験条件で発生する最大空気膜剛性は、駆動周波数1000Hz,駆動振幅2.0μm, 平均隙間9.0μmで2.17N/μmとなりました。 これは、一般に精密測定器、精密工作機械で利用されているくさび効果を用いた 動圧空気軸受の剛性と同程度の値であります。 駆動振幅を増大、平均隙間を減少させることによって、 空気膜の剛性をさらに高くすることが可能でありますが、 軸・軸受面間の接触の危険性が高まり、より高い形状精度が必要となります。




回転軸の運動誤差
スクイーズ空気膜を発生させ非接触状態で 軸を1rpmで回転させたときの回転軸の挙動について説明します。
実験は軸回転速度1rpmで、軸1回転分のx,y方向の振れを測定しました。 グラフは縦軸がy方向の変位、横軸がx方向の変位を示します。

駆動周波数を変化させた場合
左の図は、駆動振幅が2.0μmで一定とし、 駆動周波数を1、500、1000Hzと変化させた場合の心振れです。 1Hzでは空気膜が発生しておらず、接触しながら軸が振れまわっています。 500Hzでは、空気膜の発生によって心振れが減少しています。 また、500Hz以上では心振れはあまり変化しなくなりました。
駆動振幅を変化させた場合
右の図は、駆動周波数が1000Hzで一定とし, 駆動振幅を0.5、1.0、2.0μmと変化させた場合の心振れです。 駆動周振幅が小さいと発生する膜の剛性は低く、大きく触れ回りますが、 振幅の増大に連れ、膜の剛性が大きくなり、触れ回りが小さくなっています。

これらの結果より駆動周波数500Hz以上で回転軸を支持するのに 充分な空気膜の剛性がえられ、また、駆動振幅を大きくすることによって 空気膜の剛性が大きくなることが確認できました。


運動誤差補正システム

アクティブスクイーズ空気軸受は、回転している軸を非接触で支持できると同時に、回転軸の運動誤差補正が可能です。ここではその補正システムについて説明します。

本実験ではPI制御を用いています。 シグナルジェネレータで正弦波上の信号を発生し、 圧電素子駆動用のアンプで増幅し、圧電素子に入力します。 此れによって振動パッドを振動させ、 回転軸をスクイーズ空気膜によって支持します。 回転軸の運動誤差は軸受のX、Y方向に設置されている静電容量型変位計によって 計測され、LPF、A/Dボードを介してPCに取り込まれます。 その後、制御量を計算し運動誤差を補正する方向に、D/Aボードで 圧電素子に電圧を印加します。 これによって回転軸を非接触で支持しつつ、回転中の運動誤差を 実時間で補正することが出来ます


運動誤差の補正
位置決め制御
回転軸の運動誤差を補正する前段階として、回転していない軸の位置決め制御を行いました。 実験条件は、駆動周波数940Hz、駆動振幅2.0μm、平均隙間10μmで行いました。 幅0.05μmの目標値に対する軸の応答を測定した結果がこちらです。 縦軸がx方向の変位,横軸が時間です。 この図より、0。05umのステップが容易に見て取れると思います。 よって本実験装置の位置決め分解能は0.05μmで、その時の整定時間は 約30msecでした。


運動誤差補正
では、回転軸の運動誤差補正を紹介します。
実験条件は、駆動周波数1000Hz、駆動振幅2.0μm、平均隙間10.0μmで、 軸の回転数1rpmです。
運動誤差補正前
こちらに補正前の運動誤差を示します。
縦軸は軸の変動、横軸は回転角度です。 図中赤がX方向、青がY方向です。 軸の変動は週回数によらず一定で 一回転中に約5μm振れ回っています。 これは偏心成分に起因する心振れです
運動誤差補正後
こちらが運動誤差の補正結果です。
x、y方向両方とも約5μmあった運動誤差は 0.05μm以内に収めることに成功しました。 この結果より、偏心成分に起因する運動誤差は完全に補正することができました。


この結果より、今回提案したラジアルスクイーズ空気軸受は 回転軸の運動誤差を実時間で補正できることが確認できました。